遺産分割審判の流れは?弁護士費用や審判確定時の対処についても紹介

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

遺産分割調停でも解決できないケースは、遺産分割審判へ場を移して審理が行われます。
ここでは、遺産分割審判の内容や費用、流れについて掲載しています。

裁判官が強制的に遺産分割を行う「遺産分割審判」の流れ

遺産分割がうまく進まない場合には、遺産分割調停の申立てを行い、裁判官と調停委員会の立ち会いのもと話し合いによる解決を試みます。
しかし調停でも解決できないほどこじれてしまったケースは、自動的に遺産分割審判へ移行します。

当事者同士の話し合いによる解決を推し進める調停と違い、遺産分割審判では最終的に家庭裁判所が遺産分割の方法を判断し、強制的に分割されることになります。最終的な決着をつける場と言えるでしょう。
では、遺産分割審判の流れをご紹介します。

1.調停から審判へ移行、または遺産分割審判の申立て

遺産分割調停が不成立となった場合には、自動的に審判へ移行します。

調停を行わず、最初から審判を申立てることも可能ではあります。
その場合は、相続人または遺言執行者が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。
次の書類と費用が必要です。

  • 遺産分割調停申立書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本と、住民票
  • 遺産に関する証明書類(遺産目録、不動産登記事項証明書、個性資産評価証明書など)
  • 相続人1人あたり、手数料として収入印紙1200円分
  • 連絡用の郵便切手(裁判所により金額は異なる)

審判の申立てをする場合は、遺産分割調停申立書の「申立ての趣旨」欄で、「審判」にレ点を入れます。
ただし大抵の場合、まだ調停を行っていない場合はまず調停から始めるよう、家庭裁判所の職権によって変更されることがほとんどです。
話し合いで解決できる問題は、話し合いで解決することが望ましいからです。

2.審判手続き

調停委員が選任される調停の場合と違い、審判は裁判官が単独で担当します。

審判の場合、その前に行われた調停の段階で、当事者たちがどのような理由で争っており、なぜ遺産分割ができないのかが判明している状態で行われることがほとんどです。
審判前の準備として、判明している争点の確認と、必要であれば事実確認が行われます。

3.初回の審判期日

家庭裁判所から指定された期日に出頭し、初回の審判が行われます。

調停では当事者が顔を合わせることはほとんどなく、調停委員を介して意思疎通を行っていましたが、審判では相手方や他の相続人と同席し、直接対面しながら裁判官の指揮のもと審判が進んでいきます。
一般的な裁判と同じように、書面や資料による証拠や事実を確認しながら審判が行われます。

4.2回目移行の審判期日

審判は、一度限りではありません。
各相続人が自分の言い分をすべて出し尽くし、証拠を調査し尽くすまで回を重ねていきます。

5.審判前の話し合いで和解を試みる

審判では最終的に裁判官が遺産分割方法を決めますが、当事者同士の話し合いをまったく行わないわけではありません。
審判でも随時、話し合いによる和解の機会が設けられます。

もし審判において当事者同士の和解が成立した場合は、調停が成立したものとみなされ、調停調書が作成されます。
和解した時点で、審判は終了となります。

6.審判の確定

和解の試みをしてもやはり解決できなかった場合は、最終手段として裁判官が審判で遺産分割方法を決めます
裁判官は、それまでの調停および審判での記録に加え、財産の種類や性質、各相続人の年齢や職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を注意深く考慮した上で遺産分割方法を決め、審判を行います。

この審判が確定すると、その内容は強制力を持ちます。確定した内容を履行しない相続人がいる場合には、強制執行も可能になります。

審判では調停と違い、相続人全員が審判に出席しているか、相続人全員の合意があるかに関係なく遺産分割方法が確定することになります。
審判の結果は、審判書という書面にされます。

審判に不服がある場合は、2週間以内に「即時抗告」を

遺産分割審判では担当の裁判官が、当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果など、様々な資料や証拠に基づいて審判を行います。
遺産分割審判において下された決定には強制力があり、自分に都合が悪いとしても逆らうことはできません。

しかし、どうしても審判に納得がいかない場合や、正当な根拠に基づいて不服を述べたい場合には、「即時抗告」という手続きを行うことができます。

1.即時抗告とその期限

抗告とは、裁判における決定または結果(判決を除く)について、その取り消しや変更を求めるための不服申し立てのひとつの手段です。

抗告にも様々な種類がありますが、不服申し立てができる期間に制限があるのが「即時抗告」です。
遺産分割審判に対する即時抗告は、原則として審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に行う必要があります。

2.即時抗告の申立先

即時抗告をするにはまず、審判を下した家庭裁判所へ抗告状(高等裁判所宛)を提出します。審理は高等裁判所で行われます。
即時抗告では、書類の提出先は家庭裁判所ですが、実際に即時抗告についての審理を行うのは高等裁判所となります。

3.即時抗告の費用と必要書類

即時抗告の申立てには、手数料として収入印紙1800円分が必要です。
必要書類は抗告状1通と、即時抗告の理由を証明する証拠書類です。

4.即時抗告の抗告審審理

即時抗告が受理されると、抗告審の審理が始まります。即時抗告の理由によっては申立てが棄却されることもあります。
即時抗告は、正当な理由があっての申立てかどうかが非常に重要視されています。

例えば、家庭裁判所における調停・審判ですでに主張してきたことを、即時抗告を行って改めて主張することはできません
即時抗告を申し立てる理由が、「審判で自分の主張が通らなかったから」では、申立ては即座に棄却されてしまうのです。
審判を不服とする正当な根拠があって初めて、即時抗告が認められます。

抗告審にはそれまでの審判の内容が引き継がれ、改めて事実調査や証拠の確認などが行われます。
遺産分割においてはすでに調停と審判を経ての抗告審であり、すでに証拠や主張は出し尽くされ、裁判官による審理も尽くされている場合がほとんどです。

そのため、家庭裁判所の審判に問題があることを高等裁判所が認めるような新証拠などがない限り、審判の結果を大きく覆すような決定は期待できないでしょう。

5.抗告審の決定

抗告に正当な理由があった場合には、審判を取り消し、高等裁判所が審判に代わる決定を下します。
この高等裁判所の決定にも不服がある場合は、さらに最高裁判所へ抗告をすることができます。しかし遺産分割の場合、最高裁判所へ舞台を移したところで、結果が変わることはあまり期待できないでしょう。

即時抗告について留意したい点ですが、審判の結果が自分にとって不利であるために即時抗告を行っても、即時抗告によって審判の結果よりもさらに不利な結果がもたらされる場合があります。

まさに「踏んだり蹴ったり」とも言えるこのような事態を避けるためにも、審判の段階から弁護士にご相談されることをお勧めします

遺産分割審判の弁護士費用はどれくらい?

遺産分割審判において、弁護士を味方につけておいて不利になることはあり得ません。
法律問題の素人同士で、あるいは弁護士をつけた相手方と戦うのであればなおのこと、味方になってくれる弁護士を選んでおくことは必須と言えるでしょう。

遺産分割審判を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の平均は、得られた経済的利益の5%~20%程度が相場です。
経済的利益が大きくなるほど、パーセンテージは低くなることが多いでしょう。
これとは別に、着手金や日当、交通費などの実費費用が必要になります。

当事務所にご依頼いただいた場合の弁護士費用についての詳細は、料金ページでもご確認いただけますが、ご相談の際にも更にわかりやすく説明させていただきます。

当事務所では弁護士費用についても十分ご納得いただき、依頼者様にとって、明快な料金形態で依頼をお受けしております。
費用についてはご予算などのご事情も伺い、依頼者様にとって無理のない方法でご依頼いただけるよう、最大限配慮させていただきます。

有利な結果を得るために、弁護士に依頼を!

遺産分割審判は、調停でもなお解決できないほどの非常に難しいケースが扱われます。
審判を有利に進めるためには、専門家である弁護士の力が大きくプラスになります。

とりわけ即時抗告においては、審判よりもさらに不遇の結果で終わることも少なくありません。裁判所が認めるような強力な材料がない限り、逆転勝ちのような結果は期待できないでしょう。

遺産分割審判において有利な結果を残すための万全な備えは、法律のプロである弁護士にしかできません。
当事務所では、依頼者様が遺産分割審判において最良の結果を得られるよう、全力でお手伝いいたします!